Second Harvest(第2の収穫)活動

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日本には、社会生活の中で安全で十分な栄養含む食べ物を
手に入れることのできない、「フードセキュリティ=食糧確保」が
欠けている状況に暮らしている人々が75万人以上いる。
そう聞くと、すぐに「ホームレス」の方々を思い浮かべるかもしれないが、
そういった方は3%。
その他、母子家庭、ワーキングプア、高齢者、移住労働者、などなど、
安全で十分な栄養素を含む食べ物を手に入れられない方々なのである。


一方で、コンビニ最大手、セ○ンイレ○ンのニュースなどでもあらためて
気になった方も多いでしょう。 (企業を責めているわけではありません。)
賞味期限切れ食品の廃棄問題。


残飯量世界1という不名誉なNo.1の我が国、日本。
日本では毎日、消費に耐えうる食糧のなんと1/3が廃棄されているらしい。
東京では毎日6000トン(=600万キログラム)もの食料が廃棄されているのだ。

もし、私たちがこの食料の廃棄を防ぐことができ、この600万キログラムの
食料のうちのほんの一部でも、必要としている人に配布することができれば・・・


セカンドハーベストジャパンは「新品の食べ物」を買うのではなく、
「すでにある、余っている、または企業の規格からはずれた食品」を収集し、
今、食べるべき人々へ提供している特定非営利活動法人。
40年の歴史のあるアメリカでの「フードバンク」活動のシステム化と
普及をめざしている。

<フードバンク>*************************
広義の品質保証制度(社会制度上や企業内および流通上の規定)によって
「やむなく発生してしまう」規格外食品のうち、狭義の品質保証
(食品本来の品質や安全性)に問題ない食品を食品関連企業から無償で
寄付していただき、支援を必要とする福祉分野の施設・団体に無償で
寄贈する活動。
*********************************


40年ほど前のアメリカで「フードバンクの父」と呼ばれる
ヴァンヘンゲルさんが、
スーパーは寄付というカタチで倉庫に食品を「預け」、
必要としている福祉団体の人が倉庫にくれば「引き出す」ことのできる
「食べ物にも銀行のようなところがあれば」という、
10人の子供を抱えて食べるものに苦労していたシングルマザーの言葉に
ヒントを得て、1967年にアリゾナでフードバンクは誕生した。


縁あって、その日本代表や先頭にたって活動されている方々のお話(講演)を
聴く機会があった。

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代表のマーク・ケンジントンさんは、アメリカでボロボロ、傷だらけの
青少年時代を過ごした後、ボランティアの電話相談を通して、
頭からの知識ではなく自分の耳で知った社会の厳しい現実を学び、
日本では山谷で生活するなかで多くを学び、実際に自ら1年以上も隅田川で
ホームレス体験をすることで、

「わかったのは、わかっていなかったことだった」

と痛感する。

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この経験を活かして、理論だけではなく「食べることに困る」ことの意味を
体感しているだけに、その説得力はものすごい。


曰く、


中途半端に相手の立場に立つべきではない。
かわいそうに思わない。特別扱いをしない。

Responsibleに思うのではなく、
Response=ただ、反応し、こたえるのみである。



フードバンクジャパンから名称を変更して現在はセカンドハーベストジャパン。
「すでに収穫された畑から二度目の収穫をする」という考えに由来しているそうだ。

企業も捨てたくて捨てるわけではなく、廃棄費用もかかり、その削減にもなる。
この活動を通して地域貢献の絆も生まれる。
セカンドハーベストも、企業も、個人もWIN=WIN。

こう書いてしまうときれいごとに見えるかもしれない。
実際に企業との寄付契約がまとまるのは、日本社会、日本企業の独自の
考え方や社内の構造など、多くの障壁があり、大変のようである。

現にジャパンの活動では支援しているまだ多くの企業や個人が外資系であったり、
外国人、外国で働いたり住んでいたり、フードバンクの存在やボランティアの
意義をよく理解している方々が多いのも事実であるようだ。

ちなみに、冒頭のSecondHarvestJapanのロゴも、
奇遇なことだが、よくよく話を聞いてみると、以前自分の勤めていた
外資系広告会社の当時社長のAlexLopez氏がケンジントンさんの
話に共感し、ボランティアでコンセプトから創り上げたそうだ。
(自分がいた頃から、彼はProBono=公共広報に興味を持っていた。
なるほど、と納得。 )
そんなキモチの集まりがこの活動を支えている。

そんなインターナショナルなつながりのなかで、日本の食品企業担当者も
自発的に理解し、行動を始めてくれているらしい。

作ったからにはおいしく食べてもらいたい。捨てずに活かしたい。
・・・という食品に携わる人としての最も基本的な思いが
熱く行動につながる原動力になっているようだ。


「食べ物を無償で提供する」それ自体はいいことかもしれないが、
「食べ物を自分で手に入れられるように自立の道をつくることを助ける」ことの
方が意味のあることなのではないか?
という声も聞かれる。
実際、そのような質問も講演会の中で聞かれた。

ものをあげるより、道具を貸す。
もちろん、それも大切だ。

しかし、
「目の前におぼれている人がいる時、
泳ぎ方から教えて救えますか。」

まず、おぼれている人を救うことに徹している、という。
「私たちでなければ誰がやる? 今でなければいつやる?」という言葉が
心に響いた。


朝日新聞記者からフリーになり、セカンドハーベストで広報活動をサポートしている
大原さんという方のアメリカでの事情も聞くことができた。

アメリカではすでにフードバンクが40年も続いており、シカゴに新設された
フードバンクは650社からの寄付(30億円)でできたというから、
寄付文化のレベルがあまりにも違う。
その倉庫はまるでコストコのように巨大で効率がよい。

先ほどの与える・道具を貸す、にも関連するが、ここもやはり先進国。
「依存するだけでは貧困の解決にならない」というもう一方の課題解決に向けて
フードバンクの料理を自前で作ることを兼ねた12週間の料理学校がある。

ここで実際提供される料理を作ると共に、料理を学ぶことで社会生活への
復帰の足掛かりとする。
実際80%の人が職につくことができているらしい。

アメリカは色々と問題のある社会だが(もちろんアメリカだけでなく)、
やはり行動力はすごいな、と思う。
ものに限らず、ボランティアの活動も、GiveWhatYouCan.


シカゴのフードバンクの巨大な倉庫で働く人たちも様々。
自らゴミ箱をあさる体験をしていた現在フードを輸送するトラックドライバーのMさんは、
食べ物があふれているこの国で、そんな惨めなことがあってはならない、
という経験から、困った人の気持ちがよくわかるからこそ、
ムダを出してはいけない、という強い意識で働いている。

財務省を引退したRさんは、ボランティアが年125日を越えたが、
報酬ではなく、届ける先の「サンキュー」で払ってもらっている。
お金よりもずっとうれしいよ、と語る。


現在、フードバンクでは、洗剤、シャンプー、紙おむつなどの日用品も取り扱っている。
政府が配給するフードスタンプでは食料品しかもらえない為、
このような商品もすごく助かっているそうだ。
もはや、フードバンクはフードだけのバンクではない。


アメリカでの新たな課題のひとつは、これまで出ていたムダな商品が、
効率の向上とともに、規格外製品が出にくくなり、また余剰精算も効率的に
コントロールされてきている、つまり、フードバンクのある意味頼っていた、
ムダが、企業努力によって無くなってきたことだ。

その他、色々な課題で、寄付されるものは減り、食べ物を必要とする人は増える一方。
フードバンクにも、より一層効率を重視したネットワーク型の活動が求められていくだろう。



FOOD FOR ALL PEOPLE
というシンプルながら世界中の永遠の課題へ。


「もったいない」「困った時はお互いさま」という言葉のあるここ日本。
なのに、残飯世界1の日本。



あとは「ありがとう」に変えていくだけだ。

ありそうでなかった、誰にとってもありがたい

「もったいない」を「ありがとう」に。

まさに今、地球で必要とされている循環型のプロジェクト。

その日本での熱い行動は、まだ始まったばかりである。



個人でも時間や労働を寄付するなど、色々と活動に参画できます。
活動の詳しくは:
セカンドハーベストジャパン

http://www.secondharvestjapan.org/index.php/jpn_home



尚、本ブログは大原さんの本から多くを学ばせていただき、書いています。
「フードバンクという挑戦 ~ 貧困と飽食のあいだで」
大原悦子 岩波書店

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http://www.amazon.co.jp/%E3%83%95%E3%83%BC%E3%83%89%E3%83%90%E3%83%B3%E3%82%AF%E3%81%A8%E3%81%84%E3%81%86%E6%8C%91%E6%88%A6-%E8%B2%A7%E5%9B%B0%E3%81%A8%E9%A3%BD%E9%A3%9F%E3%81%AE%E3%81%82%E3%81%84%E3%81%A0%E3%81%A7-%E5%A4%A7%E5%8E%9F-%E6%82%A6%E5%AD%90/dp/4000246445