プリウス、インサイトのハイブリッド勢に続いて、
アイミーブやプレオという軽のEVがいよいよ発売され、
低炭素社会への第一歩が動き出した。

・・・と最近よく言われることだが、実際これらが「低炭素社会」に
大きく貢献するのは、まだまだ先の話になる。

確かにプリウス、ハイブリッドはこの不景気、しかもどん底の自動車業界に
とっては明るい話題であり、実際数も売れている。
ハイブリッドが脱石油系依存社会への移行期間の産物なのか、
まだまだ見えないところであるが、本命とされる排気ガスゼロのEVに関しては、
正直軽2種類が販売開始されたところで、実際動きだしたこと自体はすばらしいことだが、
「効果」となると、まだまだ気の遠くなるような話であろう。

そんな中、気になっていた動きについて、具体的なデモと説明がある
ということで、横浜に行ってみた。

元日本SAP藤井社長のBetter Place Japan社 による: 
環境省が実施する「次世代自動車導入促進事業」の一環として
横浜市で開催される「バッテリー交換ステーション実証試験」がそれだ。

http://www.betterplace.com/japan/event/kyodo-session/(受付は終了)

充電は時間がかかる。
自宅のコンセントで充電できるのはマンションではなく持ち家のみ。
出先での充電も時間がかかる。

であれば、ガソリンタンクであれば満タンになるのを待つのではなく、
タンクごと交換してしまおう、つまり、「バッテリーを交換型にすれば
課題は解決する」、という発想の元に、インフラのプロデュースをしていく
企業による公開実験デモンストレーションである。

「(現状では200kgもある)EV用バッテリーを交換する?」と相手にもされなかった、
自動車メーカーの発想では在り得ないところから始まったプロジェクトである。
山下公園向かいの人形の家のとなりの空き地を利用しての公開実験。
白いテントのブースに時間ギリギリで入ると
早速デモが始まった。

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パワーポイントでの説明やベタープレイス本社の映像などの紹介に織り交ぜて、
実際の「バッテリー交換型EV車の交換デモ」が行なわれた。

クルマがガスステーションならぬバッテリー交換ステーションに入る。

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軍用機のミサイルなどで活用されているツメでの固定=ラッチを活用して、
車体の下部に取り付けられた交換用バッテリーをとりはずす。
あのミサイルでさえ、2点固定でしっかりと落ちることはない。
それを4点固定しているので外れて落ちることはない。
既に実験車は認可を得て、公道を走れるナンバーを取得している。

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BlueToothで車体、バッテリーの種類などが全て自動的に検知されて
カスタマイズされた動きが全自動で行なわれる。
(ピラーにあるアンテナ状のものがBlueToothと思われる。)

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ステーションは無人であり、電気を通してのやりとりはガソリンスタンド
というよりもETCに近いかもしれない。

交換作業時間はガソリンの給油とほぼ同じの数分程度。

これが電気の接点。電気を送る側、受ける側お互いに異常なしと判断されて
始めて交換~脱着が行なわれる。

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デモの一環でツアー全体一旦外に出る。

環境省の「次世代自動車導入促進事業」の一環ということで、
このバッテリー交換システムの電力は全てこのソーラー発電で
まかなっている点もデモの一部となっている。
ちなみにSharp製。

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他に、バッテリー「交換」ではなく、「充電」、「急速充電」の端末も。

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「充電スポット」と「バッテリー交換ステーション」の両面による
インフラの構築で、理論的には無制限な走行が可能になる。
(今までの充電のみだと、130kmなど一定のフル充電の走行距離が
 限界となり、また充電にはかなりの時間を要していた。)

このインフラは単に一台、一台に電気を充電なり、交換なりで供給するだけで
なく、
ネットワーク管理というソフトウェアも含まれている。

A市では交換バッテリーの充電がフル回転、B市では交換バッテリーが十分
スタンバイしている場合、中間地点にいるクルマにはB市に誘導するなど、
「全体最適化」も視野に入れているようだ。

ユーザー、ステーション、電力会社それぞれがWin=Winになるシステム・・・
と言えるかも。

ベタープレイスはイスラエルでスタートし、世界の主要都市に拡大予定。
アジアでは日本が拠点となり、バッテリー交換タイプの公開実験はこの横浜の
ものが世界初ということだ。

石油資源の乏しいイスラエルでは、オール電化ならぬオールEVが国家的な目標と
なっており、既に400箇所以上の充電スポットが設置されているらしい。

日本ではEV開発に積極的な日産がルノー日産グループとしてこの
プロジェクトに参画している。

イスラエルの首脳、ベタープレイスCEO,そしてゴーンさんの3ショットも。

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ちなみに今回のデモカーは日産Dualisをベースとしたもの。

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クルマそのものの最初からの開発ではなく、現行車に後付で処理したデモカーであり、
日産の中でも車高の高いSUVということでDualisになったようだ。

今後車体からデザインする場合は通常のセダンでもOKとのこと。
また、日産だけでなく、すべてのクルマメーカーが対象となりうる。

ベタープレイス社の構想としては、まずタクシー会社との連携を考えている。
それは
● まず、走行距離が違う。たくさん走るクルマにこそ
導入してそもそもの低炭素社会構築に貢献できると考えるからである。 
(家庭用の軽だけというレベルではなく)
● 一定のエリアを走り、交換ステーションも一括管理できる。
● 夜間電力を計画的に使えば、タクシー会社経営の
ランニングコストも安くなる。
● 交通インフラとしてのタクシーが導入することで、
一般への体験も広がる。
などなど、理にかなった導入動機・機会が多くあるためだ。
タクシーから始めて、トラックなどの運送業、さらに個人の移動などへ。


まだまだ課題、調整すべきことは山のようにあるはずだ。

とある自動車メーカーの方(日産以外)と立ち話をする機会があり
聞いてみたらところ、今、話題の台風の目にあるらしい。
ベタープレイス社がすべてを牛耳るインフラとして独占的な位置を
占めることへの懸念も正直あると言っていた。

日本の、世界の、そして石油に依存してきた近代社会の全てが
大きく変わるかもしれないのだから、不安や不透明な部分が出てくるのは
むしろ当たり前。

舵が動いてから巨大は船が曲がり始まるまで、どれだけの時間や課題が
あるだろう。

しかし、タイタニックならぬアース号は氷山にぶつかる前に
曲がらなくてはならない。

この船は沈んではならない。



その舵の切り始めを横浜で見てきたような気がする。


asahi.comの「朝日地球環境FORUM2009」参考記事:

http://www.asahi.com/eco/forum2009/news/j/TKY200906110230.html