「旅する力」
もうタイトルからしてヤバイ。

11月はじめのこと。
別にW大学卒業生ではないのだが、とあるマイミクさんの日記から
この講演のことを知り、瞬時に行くことに決めた。
http://ameblo.jp/seryoken-express/

「深夜特急」はおそらく人生のなかで最も
読んでいる間の体温が上がり、血圧が高くなり、次の一行から
眼を離せなくなった本である。

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あの旅をした男に会える。。。

マイミクさんと久しぶりの再会のあと、旅の達人たちが集合して、
まずは近くのコリアン食堂でランチを共に食べた。
初対面ながらも「旅に関する温度」が近いので、みなすぐに打ち解けた。
それぞれの簡単な旅遍歴を語りつつ、韓国料理で汗をかき、いざ、会場へ。

700人収容だったか、かの大隈講堂より広いという、新しい大教室での講演だ。
講演そのものは撮影禁止だったので、これは始まる前のヒトコマ。

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数人で集まり、元在校生さんの道案内で目的の建物へ。
並んでいる。
列は地下の階段へつながっている。
もう1階下へ。さらに下へ。

開場後、ぞろぞろと教室へ入ると静かな熱気で溢れている。
満席プラス相当数の立ち見のなか、
沢木耕太郎氏の登壇だ。

山口瞳さんの成人式の某ウイスキー会社の広告メッセージなど
いくつかのエピソードのあと、旅の映画の話へと続いていく。

先日まで公開されていたショーンペン監督作品
“Into The Wild”、(イントゥ・ザ・ワイルド)
http://intothewild.jp/

そして若きチェ・ゲバラの医大生時代の旅行記
“Motorcycle Diaries”(モーターサイクル・ダイアリーズ)
http://www.kadokawa-pictures.co.jp/official/m_cycle_diaries/

をひきあいに、旅がいかに人を考えさせ、成長させていくかを語る。
奇遇なことだが、モーター・・はなぜか前日にDVDで見直していた。
この2つの映画は実際にあった旅を再現した映画であり、
本当にあったことだからこそ、旅から何を学んだか、がリアルに伝わってくる。

ロードムービーと言っても、“ストレンジャー・ザン・パラダイス”や
“バグダッド・カフェ”、
ましてや“テルマ&ルイーズ”や“イージーライダー“にはない、
リアルをベースにした力が違う点である。

なぜ裕福な学生がすべてを捨て、旅を続け、その生涯を終えたか?
なぜひとりの医学生が世界で最も有名な現代革命家になっていったのか?
それぞれの映画はその答えを教えてくれる。

話はさらに続き、大沢たかおが主演した「深夜特急」のドラマについてのエピソードへ。

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対談か何かで大沢氏本人と会うことになり、初めて前の日にドラマを見たそうだ。
そして想像以上におもしろかったらしい。

ドラマは実際の旅(=深夜特急原作)とは若干ことなるが、
多くは実際の行程をロケしている。
そして、沢木氏は感じた。大沢氏はロケでありながらも、
そこから何かを感じた「旅」を経験し、長いロケの中で変わっていった。
成長していった、と。
これは「仕事と割り切った」旅行ではなく、「旅」だったのではなかったのか、と。

それは「猿岩石」のエピソードと対比される。
沢木氏にとって、あの旅番組は「旅」ではなく、「仕事」であった、と。
まわりのスタッフが手助けし、「割り切って」撮影されたロケであっただろう、と。

おそらくそれぞれの表情がこの違いを語っていたのだろう。
大沢氏のドラマ、DVDレンタルはあるのだろうか?
存在は、そしてその評価は知っていたものの、自分もまだ見ていない。



さて、休憩なし2時間超の講演は後半になると、旅の本質について入ってくる。

とある旅先で、やっと実現できた旅の途中の老夫婦に「どんな旅をしたのか?」を聞かれ、
深夜特急の行程を語ったところ、老紳士は深くため息をついたそうだ。

“Too Late.”

「(自分は)もうそんな旅をするには遅すぎる」とうらやましがったそうだ。

若い時の旅は、その時点で既に「経験がない」というアドバンテージを持っており、
全てが新鮮に映る。というのが、沢木氏の持論。
経験を積むにつれて、予測が新鮮さを奪っていく。ということだろうか。

これについては自分も全く同感だ。
1985年のアメリカ~メキシコの1ヶ月バックパック陸路極貧旅行では、
特にメキシコでは、それまでの自分のちっぽけな常識の脳を毎日フライパンで
ガツンガツンなぐられているよう(笑)であった。
あの快感はもっともっと体験したかった。

人生折り返しに入った自分、“Too Late”という老紳士の言葉にはハッとした。

一方で、沢木氏は「最近の若者」については、こんな危惧もしている。
(雑誌、Coyote「深夜特急」ノート、「韓国語版あとがき」より、抜粋)

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・・しかし、そうした旅を気軽にできるようになった若者たちに対して、
私が微かに危惧を抱く点があるとすれば、旅の目的が単に「行く」ことだけに
なってしまっているのではないかということです。

大事なのは「行く」過程で、何を「感じ」られたかということであるはず
だからです。
目的地に着くことよりも、そこに吹いている風を、流れている水を、
降り注いでいる光を、そして行き交う人をどのように感受できたかということ
の方がはるかに重要なのです。

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その人なりの、その年齢なりの、旅と向き合う姿勢が明確であれば、
きっと新しい旅は新しい経験になり、新しい何かを身に付けることにつながるのだと思う。



最後に、講演でも語っていた、とてもシビレる言葉。
同じく、「韓国語版あとがき」より抜粋して、このブログを終わりにしたい。

「旅のチカラ」は同名の書籍が販売されるらしい。
(なんだ、宣伝でもあるのか、ともチラリと思いつつ、今からとても楽しみにしている。)



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・・・旅は、自分が人間としていかに小さいかを教えてくれる場であると共に
大きくなるための力をつけてくれる場でもあります。
つまり旅はもうひとつの学校でもあるのです。

入るのも自由なら出るのも自由な学校。
大きなものを得ることができるが失うこともある学校。
教師は世界中の人々であり、教室は世界そのものであるという学校。

もし、いま、あなたがそうした学校としての旅に出ようとしているのなら、
もうひとつ言葉を贈りたいと思います。

「旅に教科書はない。教科書を作るのはあなたなのだ」と。

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