一夜明けて、満天望からすぐの坂を下っていくと、そこはもう横間海岸。
お盆休みなのに、朝のこの海岸はほぼ貸切状態だ。

ただひたすら繰り返しうごめくうねり。
ただひたすら打ち寄せてくる波。

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そこに向き合う岩。
長年の波との対話で細かくなった無数の石。

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そして関東の海とは比べ物にならないほど少しの、でも
皆無ではない、流れ着いた人工のもの。

海をこんなにひとり(正確には息子とふたり)占めしたのは
初めてじゃないだろうか。

午前中をたっぷりと貸切状態で過ごし
(実際海岸を訪れたのは4組程度)、一旦宿へ戻ってから、午後の行動へ。

徒歩で昔からの街並みを歩き、
街の中心でレンタカーを借りることにしていたのだ。

途中、お昼時になったが、まわりには民家以外食堂らしきものは何もない。
このまま街まで我慢するしかないか、と諦めかけたところで、
売店を発見!

しかし、そこには飲み物のクーラーと、洗剤などの生活雑貨しかなかった。

お昼はビスケットと八丈牛乳。
たまにはこんなのも、悪くない。
(というか、それしかないのだから。。。)

テラスもベンチもない商店なので、地べたに座って食べる。

うん。ビスケットと八丈牛乳。いい組み合わせじゃないか。

地べたに座って食べる、飲むという経験も普段ないので、
地面の様子が気になる。

蟻の行列だ。

ビスケットのかけらを落としてみる。
しばらくするとたくさんの蟻が寄ってきた。
自分たちの体の数倍のかけらを抱えて、巣へと運んで行く。
都会だって同じようなことをすることはある。
しかし、今日は時間がたっぷりあるのだ。
蟻の行列、蟻の仕事をじっくりと観察できた。

垂直の壁さえも巨大なかけらを抱えて、軽々と登っていく。
共同作業の完璧さにしばし感動する。

食堂があったら、椅子に座ってお昼を食べていたら見られない
光景だった。

軽い軽食(笑)をすませ、さらに街へ向かって歩いて行く。

歴史民俗資料館が右手に見えてきた。

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ここでは八丈の歴史、自然、工芸、地形、産物、あらゆるものがわかる。
ゆっくりと見てまわると次の部屋へ。
え、まだあるの?
え、まだあるの?
正直たいしたことはないと思っていた資料館は、とても奥深かった。
にわか八丈ファンに色々なことを教えてくれた。
(展示物について書くと本当にきりがないので、残念ながら割愛。。。)

1時間半ほど資料館を堪能して、さらに街の中心へ歩く。

ほどなくして、ガソリンスタンドの隣にレンタカーを発見。
予約していた軽自動車を借りる。

CVTの調子が悪く、加速が全くのびず、もたつく。
上り坂はエアコンを切らないとスピードが出ない。

が、足と割り切っているので、問題ない。
思い通りにどこへも行けることがとてもありがたい。

2日目にmixiつながりのKさんに教わった、ホテルの跡地に行ってみる。
ここは映画TRICKのロケ地だったらしい。

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今は閉鎖して廃墟となっている。
たしかにこの規模は、この島には必要ないだろう。
なんだか、”Hotel California”の一節を思い出した。

You can check in any time you like, but you can never leave…

左回りで北をぐるりとまわり、
途中、やぎの群れや小島のきれいな風景に出会い、
これまた2日目にKさんに連れてきていただいた
カフェ「空間舎」に再び訪れた。

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ガイドブックにも載っていない落ち着いた空間に、
静かにレイアウトされたインテリア。

スペシャルな宇治金時は、ふわりと口の中で溶け、甘すぎない風味が
乾いた口に広がっていく。

海の目の前、潮騒の聞こえるカフェやバーに憧れたものだが、
こうして緑に囲まれ、少し遠くに海が見えるというロケーションもまた
いいものだ。

かき氷のイメージを超えた一品をいただき、軽自動車で海へ向かって
下っていく。

夕景が有名な千畳岩海岸だ。

流れ出した溶岩が海岸で冷やされ、千畳ものひろさに広がったという。
その黒々とした広大なスペースは圧巻であったが、さらに海岸線まで
溶岩の上を進んでいくと、忽然と目の前が開けた。

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白い飛沫を高くまで飛び散らせて砕ける波。
白い絨毯のように波の泡が拡がり、一面を覆う。
そして遠くには小島が夕景をバックにシルエットでそびえる。

この構成は見る者をなかなか放してくれなかった。


満天望に戻り、島寿司を中心とした素朴にしてリッチな食事をいただく。
腹の底まで八丈に染まり始めてきた。

そしていよいよ最後の夜だ。