先日、10年来勤めた外資系代理店の当時の仲間と久しぶりに集まった。
総勢12名のうち、その会社に勤めている人の方が今や少数となり、
いわゆるOB・OGの同窓会状態だ。

創始者のレオバーネット氏は僕が89年に転職した時には
既に他界されていたが、そのフィロソフィーは
世界中のオフィスでまさに息づいていた。

マネージメントからの社内メモも、ことあるごとにこう締めくくる。

レオなら、こう言っていただろう。「(過去の言葉を引用しながら・・・・)」

そんなレオじいさんに天国から見守られた孫たちのように、
僕らはファミリーのように仕事をしていた。

目指すもの、目指すべきものがひとつ、
レオじいさんの想いを共通に背負っているので明確だ。

世界中のオフィスの受付には彼の引退スピーチ、
「私の名前をドアからはずす時」がフレームで掲げられている。


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自分が引退した後も、こんな会社になってしまったら、
私は名前をドアからはずす、という意味で、
あってはならないことを逆説的に書き記した、僕らの指針。

ファミリーの安心感、信念があったから、いい仕事ができた。
いい関係が築けた。 だから今もこうして集まっている。




同窓会の会場は、千駄ヶ谷の居酒屋「鮒忠」。
(僕らは、「じゃ、いつものチューフナで。」が合言葉。)

ほぼ決まっている顔ぶれのひとり、T君の実家でもある。
屋上でアウトドアパーティーと称して明け方まで騒ぎ、
出入り禁止になったのも遠い昔の思い出(笑)。


参加者のひとり、Iさんと呑みながら色々と話した。

彼は現在某メーカーの広報マネジャーとして活躍している。
お互い在籍中はあまり話さなかったカメラの話で盛り上がった。

27歳の時、僕はNikon担当でドイツでの
世界映像見本市「フォトキナ」のNikonブースを担当した。

Iさんもここ数年、出展社としてフォトキナに行ったという。
ケルンやデュッセルドルフの話のあと、カメラの話から
デジタルとアナログの話に続いていく。

アナログ世代の僕らも今は当然ながらデジタル化の中で仕事をしている。
特に彼はデジタル最先端のメーカーの広報である。
商品としては最新のスペックがどうしても売りものとなり、
PRすべき点。

しかし、その先にあるもの。
あるべきものを本来は伝えるべきなのではないか。




初代Walkmanは圧倒的なインパクトを持って当時の若者に
受け入れられた。

当時はマイクロカセットもあった(と思う)。
技術的に、スペック的にものすごいブレークスルーでもなかったのでは。

熱狂的に受け入れられたのは、音楽を気軽に外に持ち出せたこと。
広告でもスペックは、少なくともスペックをスペックとして
語っていなかった。
(もちろんボディーコピーでは語られるものの。)


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「音が進化した。  人はどうですか?」


片や、デジタルオーディオプレイヤーで一人勝ちのiPod。

テクノロジーはすごい。iTuneというソフトとの
カップリングという戦略もさすがだ。

しかし、スペックだけで語ることはしなかった。

(Nanoで)メインにアピールしていたのは、
“1、000 Songs. Incredibly Small.”
 だけ。


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デジタルオーディオを、4GBの容量をあの小ささに、というスペックの
すごさはある。
が、伝えたのは、
気軽に自分の好きな1000曲をどこでも楽しめるという、
スペックのその先にあるもの。あるべきもの。

iPodには人に与えるそんな使命、約束がある。
まずはそれを伝えよう。理解・共感していただこう。
「同じゴール」で分業しているAppleのプロフェッショナルたちの
成果であり、誇りではないだろうか。

同じゴールを明確に共有すること。
何をもたらしてくれるかを第一に考えること。

レオじいさんの教えてくれたことは、こんなところにも
つながっているのかも。


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と、語り続けた夜であった。