遅くなってしまったが、
いよいよ本題に。
「深夜特急」のヒミツ、第2章。

Coyoteの特集:「深夜特急」ノートから
いくつか気になったストーリー・裏話を
ピックアップしてみた。

「深夜特急」に載っていることも含めて
色々とあの旅の原点が見えてくるような気がする。


西へ
あの旅 ~西へひたすら進む旅~ は初めての外国:韓国に
行った時に芽生えたらしい。
日本という島を離れて、大陸に降り立ったとき、このまま
「西に向かってどこまでもいけばパリに行けるのだな」と。

当時の若い旅行者の多くはヨーロッパからアジアへの“西→東”コース。
「他の人と同じことをするのがいやだった」ので、
それも「乗り合いバスという誰もしない馬鹿げた方法」で。

それが予想以上に長い、そして深い旅になるとは
思わなかったのだろうが。
そして、この東→西というコースが、
「第三便」の出版に6年もかかる布石にもなったとも言える。

ストップ・オーバー
出発はデリー、到着地はロンドンと決めた。
「デリー発ロンドン行き」という響きが「切れ味が良かった」からという。
う~ん、こんな決め方、かっこいいな。

ところが折角決めた出発地がいとも簡単に変更になった。
それは、チケットを受け取りにいった際に初めて聞いた
「ストップ・オーバー」という言葉。
途中でふたつの都市に寄ることができると聞いて、
香港とバンコクを選んだという。
こうして香港が出発地になったわけだが、
この変更が大きく旅が変化するきっかけになるとは思いもしなかったろう。

まさに「深夜特急」の旅は、
出発する前から、こうして、その運命が決められていたとも言える。

百ドル札一枚
三~四ヶ月で帰ってくるつもりの旅に、某出版社の編集者が餞別といって
渡してくれた封筒には百ドル札が一枚。
「粋なふるまい」に参ってしまったらしい。

実際、パスポートの奥にしまい、いざと言う時にとっておいたこの一枚が
「どれだけ心強かったか」。
結局帰るまで使うことのなかった百ドル札。
以後、しばらくは自分が旅するものへの餞別として渡したという。

なるほど、餞別とはいくらかのお金ではなく、
ココロのよりどころとしても役立つとわけだ。

ガイドブック ~確認と発見~
沢木氏はガイドブックを持っていかなかった。
世界的なクライマーY氏の言葉:
「できるだけ素のままの自分を山に放ちたいんです。」
この言葉が沢木氏には大きく響いたらしい。

山を国にかえてみれば、
「できるだけ素のままの自分を異国に放ちたい。」ということになり、
「その地で何も知らないことによる悪戦苦闘によって、よりよく
その土地を、そして自分自身を知ることにもなる」と感じたという。

僕自身も旅には「確認の旅」と「発見の旅」があると考えている。
そして「発見の旅」が格段にスリリングで感動的であるのは
いうまでもない。

たしかに「え、ホンモノのホワイトハウスって、こんなものか」
という確認だけではなく、
例えば声もでなかったグランドキャニオンの大きさは
まさに確認を超えて発見の旅であったが。


ミッドナイト・エクスプレス
沢木氏は旅から帰って三年後、一本の映画に出会った。
「ミッドナイト・エクスプレス」。
「深夜特急」は、少なくともこのタイトルの紀行文はこの映画がなかったら
書かれなかっただろうと回想している。

舞台はトルコ。
主人公のアメリカ人学生ビリーはハシシを持ち帰ろうと隠して機内へ。
つかまって刑務所の中で凄惨な日々を費やすことになる。

僕もCoyoteで読んで初めて知ったのだが、この映画には
ものすごいメンバーが関わっていた。
製作:デビッド・パットナム
監督:アラン・パーカー
脚本:オリバー・ストーン

マリファナの取引に使われる店は、沢木氏にはどうしても
長期旅行者が利用するイスタンブールの「プディング・ショップ」に
思えてならなかった。
よくよく調べると映画のロケ地は違うものの、原作ではビンゴ!
「プディング・ショップ」であった・・というわけだ。

・・ということは、まさにその運命と自分の運命も紙一重だったかも
しれないのだ。 自分があんな目にあっていたら、という
イメージが強く感じられ、沢木氏の心に刻まれることとなる。

原作でやはり!となる着眼点、観察力はさすがである。
逆にそれほどに「プディング・ショップ」には独特の
オーラがあったということか。


ミッドナイト・エクスプレス(2)

映画では脱獄することを「ミッドナイトエクスプレスに乗る」と
表現していたが、沢木氏にとってもあの旅が
自分なりに「ミッドナイトエクスプレスに乗っていた」と感じたらしい。

紀行文のタイトルは
「ユーラシアの果てまでの旅」などの候補がありながら、
最後まで「飛光よ、飛光よ」が残っていた。
同時に、沢木氏には「ミッドナイト・・」の記憶が鮮烈に残っていた。
そのまま訳せば「深夜急行」になるが、「特急」の方が「落ち着きがいい」。
実際は鈍行に乗ってのような旅であったが、あの深い恐怖とスリルが
消えることはなかったのだろう。

なぜ、急行列車などに乗る旅でもないのに、「特急」なのか
疑問にも抱いたことがなかったが、そこには「速い・遅い」の
特急ではなく、こんな想いが込められていたわけだ。

第2章はここまで。

「深夜特急」にあわせて?の3部構成、
最終章では、第三便の出版が遅れた訳、など
いくつかのヒミツを記したい。