20代に最も影響を受けた作家、片岡義男。

久しぶりに文庫本「一日じゅう空を見ていた」を読んだ。

あり得ないほど遠くの世界じゃないけど、
憧れるかっこいいオトナたちの
スライス・オブ・ライフ。
そんな世界を思い出しながら読んでいった。

その憧れの世界は、20年後の今ならシーンに必ず登場するであろう
携帯やメールがない以外は、今も魅力的なオーラを放っている。

「一日じゅう空を見ていた」は
秋晴れのある日、彼女の誕生日プレゼントにオープンカーで
(正確にはTバー・ルーフ)のドライブをプレゼントするストーリー。
Tバーをはずしてリクライニングし、助手席で一日じゅう空を見るという
モノではなくコトでのプレゼントだ。

さて、あとがき、というか巻末の「著者とのインタヴュー」の中で
片岡氏はこう語る。

―― あのようなもの静かな、気持ちのやさしい男性は、片岡さんの分身というか、
自己の投影なのでしょうか。
「ひとつのストーリーですからね。ストーリーというよりも、この場合は、
アイディアの提示みたいなことですから。」
(中略)
―― でも、どこかでかならず、書き手の地は出ると私は思うのですけど。
「それは、出ますよ。このストーリーとまったくおなじ状況があって、
相手の女性からこんなふうに働きかけられたら、
おなじような反応をするかもしれません。
アイディアの提示とは、人生観ですからね。」

アイディアの提示とは、人生観。

当たり前ではあるけど、あらためて書かれると、重い。
逆にいうと、人生観の深さ、広さが、アイディアに出ちゃうわけで。

まだまだ、カッコイイ男には程遠いな。。